2013年9月14日土曜日

エルサレム旅日記3

エルサレム旅日記1
エルサレム旅日記2



9月4日(水)    

6時半起床。 昨日と同様、朝一番に窓を開ける。
長袖のパジャマでも少し肌寒いひんやりとした空気。
まだ薄曇りだが、しかし雨の心配をする必要はない。

ここは、夏場の降水量ほぼゼロなのだから。
街の様子を眺めるとともに、お向かいの裸男を確認する。
いや、まず
裸男を確認してから街の順か。
朝からキモイものをなぜ見るのか、私はかなりの変態なのだな。

身支度を終え、7時半近くに1階のダイニングに行くと・・・
あれれ、開いていない。
「朝食か?」とフロントが聞く。
「今日は朝食はやっていない、明日のための準備があるので。
 代わりにバウチャーを出すからワンミニッツ待って」
なぬー。あの朝食が食べられないとはザンネンだ。
近くのカフェで食べて来いと言う。
クオリティ下がるだろうなあ・・・チッ。

そもそもそんなの予約時には聞いてねーぞー。
前からわかっていたくせに。
いくら明日から正月とはいえ、いったい何を今から準備するのか。
じゃあ残り3回のあたしの朝食はどうなる? などと言いたいことはいろいろあったが、
明日の朝食は?の一言に省略してみた。
「明日からは大丈夫」だと言う。ほんとかね?

で。
ワンミニッツっていうのは、確か1分という意味ではなかったか。
フロントの目の前のソファで、
カップラーメンができ上がるくらい待ったけど音沙汰なしだ。
あのー、バウチャーは? と聞くと、
紙切れにささっとサインして渡された。
ワンミニッツどころか、ワンセコンドである。
いったい何の時間だったのか? 
くれくれと手を突き出してフロントに詰め寄らなかったのがいけないのか。
よくわからん。
わかるのは、やはりちっとも謝りはしないってことだ。
もっと自己主張しないと、ここではソンするな。


ホテル斜め前のカフェ。
厨房もサービスも、わりにイケメンなお兄さんたちである。
しかし相変わらず、愛想が今イチない。
サービスのお兄さんのTシャツの腰あたりからスボンのお尻あたりにかけて
朝一番なのになぜかもう薄汚れているが、
それくらいはもう見慣れて何とも思わなくなってきた。


朝食の心配は杞憂に終わった。




あらー、美味しそうじゃないの。
どれどれ。ケシの実のついたパンは温められて香ばしく、
これにいろいろなディップ(コリアンダー、トマト、オリーブ、バジル)や
デーツのコンフィチュール、クリームチーズをつけて食べる。旨い。

グラノラをトッピングしたヨーグルトともう1種チーズ、
大ぶりのピーマン、キュウリ、トマト。
タイムやローズマリーがちろっと振ってあるなど、さりげない香草づかい。
それからシンプルな薄焼き卵、コーヒー、絞りたてのオレンジジュース。
いいね、明日もここでいいな。

同じホテルの日本人カップルもやってきた。
昨日の朝もホテルのダイニングで見たのだが、
女は今日もまた、『地球の歩き方』を持ってきている。
男は常に空咳と鼻すすりをして落ち着きがない。
なんか、好きじゃないタイプの二人だなあ。


旅の後半が正月に入ることは、実は旅の予約をした後に知った事実だった。
記者氏に連絡したら「あっ! そうでした」と忘れていた。
ちょっとぉー。
明日から土曜の安息日までの3日間、ユダヤ関連の店はすべて閉まってしまうので、
買い物するなら今日のうちだ。あさって金曜はイスラムの安息日でもあるし。
ちなみにもしあと1週間ずれていたら、
9月14日は贖罪の日(ヨーム・キプール)という祝日で、
街のすべて、空港も含め完全にストップするらしい。
いろんなところで、私はギリギリラッキーガールである。


昨日行ったマハネー・イェフダー市場へ再び。
女性記者に教わった、コーヒーショップ兼スパイスの店へ買い出しだ。
炊き込みご飯のもとのようなミックススパイス、肉や魚に振るスパイス、
メルローワインの風味をつけた塩、唐辛子、ローズティー、
皮がかたくないドライデーツなどあれこれ買い込む。
量り売りなのでいったいいくらになるのか見当がつかない。
結果、1万円。いい値段いってしまったあ(汗)。
ここの店は、ぼったくりはしないらしいので、信じるしかない。
ちなみにエルサレムの物価は、パレスチナ側は安いらしいが、
このあたりは東京とほとんど変わらないか、物によっては少し高いくらいかも。









新市街の写真を撮りながらブラブラ。
エルサレムはネコが非常に多い。いたるところにいる。
カメラを向けて近づいても、逃げるどころかモデルばりの目線だ。
オープンエアのテーブルの下には、まるで鳩がパンくずを狙うようにネコがいて、
ひとけのない裏路地に入ると、生まれて間もないような子ネコが何匹もいる。
そして裏路地は、ネコのせいか、いや、人間のものも含まれているような、
おしっこ臭いところが多い。











新市街は一応しゃれた商店街だが、しゃれていると言っても
日本で言えばどこか小さな地方の街レベル。



なとなく視線を感じてそちらを見ると、
昨日、旧市街で会ったイタリア出身アイルランドのおじさんがそこにいるではないか。


やあ、また会ったね。
スパイスの袋を両腕にぶら下げた私を見て、
ははーん、女性は買い物好きだからね、と笑う。
おじさんは今日も一人だ。私も一人だけど。
通りで披露しているギター弾きの音色を楽しんでいたと言う。
ホテルではなく友達の家にしばらく滞在しているらしい。
2回会ったからまた3回目もあるね、と再び握手して別れた。
今日も乾いた手だった。
3回会うことは結局、なかった。


旅の間中、私は記者氏のオフィスを休憩所代わりにして、
どこかへ行っては立ち寄り、
今、見聞きしたことを彼に伝え、仕事の邪魔をした。

この時は、ちょっと時間があいたというので、
ワインショップに連れていってもらう。
ワインも買いたいけどねえ、1本で1kgになってしまう。
代わりにワインの本を購入。




パレスチナの女性の手作り民芸品の店にも連れていってもらった。
店員の女性は、私が物色している間、目の前でじーぃっと見続けている。

接客してくれているのか、しかし笑顔がないので監視されているのか、
わからず落ち着かない。






イスラエルの公用語はヘブライ語(ユダヤ人)とアラビア語(アラブ人)だ。
街の看板には、ヘブライ語・アラビア語・英語の順で表記されている。
海外に行ったならば、最低限「こんにちは」「ありがとう」くらいは現地の言葉で
言えるようにしたいものだし、そうしてきたけれど、ここではそれが難しい。
ヘブライ語でこんにちはは「シャローム」、アラビア語は「アッサラーム・アレイコム」、ありがとうは「トダー・ラバー」と「シュクラン」。
シャロームとシュクランはシンプルなので覚えたのだが、
それぞれ違う言語であり、イスラエル対パレスチナという大きな問題を背負っているので
混ぜてはいけない。
ましてや、相手がどっちの人なのかを瞬時に判断して言うことなどなかなかできない。
そのため、結局、ハロー、サンキューとなってしまう。


午後は旧市街へ。





昨日は見ていない聖墳墓教会を訪れる。






すごい訪問客の数。それも、私のような物見遊山ではなく、
巡礼目的の熱心な信者が圧倒的だ。
入口からすぐの所にある赤い大理石板は、
イエスの亡骸に香油を塗った場所とされている。
教会内は広く、一番人気はイエスの墓で、
その他、各宗派がそれぞれ管理しているという聖堂がいくつもある。




階段を降り奥へ奥へと進むと、人の波が途切れ、
薄暗い中、一人の男の信者と私だけになった。
その人はややくたびれたスーツを着て、裸足で歩いてた。
聖堂の前でひざまずき、唇を石の地面にあて、祈り、
またそのとなりの聖堂へとくり返していた。
足の裏は真っ黒になっていた。
私は、その人の邪魔をしないように、でも少し後からついていく形で、
祈ることなく、祈ることの意味を考えながら、見て回った。


十字架を背負ったイエスが最初につまづいたといわれる曲がり角には
オーストリアン・ホスピスがある。
ここは、ザッハ・トルテやシュトゥルーデルなどのウイーン菓子とコーヒーが
庭園で味わえる異空間だという。
あまりの暑さでとてもスイーツを食べる気にはなれないが、
少し落ち着いてコーヒーが飲みたい。
が、どうやって中に入るのかがわからない。
高い塀に囲われ、入口の扉は閉まっているのだ。
休みなのか? 諦めるかあ。
いや、待てよ、しばらく様子を観察していたら何かわかるかもしれない。
このあたりはいつも兵士が多く立っている。
この人たちに聞いたら教えてくれるのかなあ。
すると、旅行者らしい欧米人が、扉脇のブザーを押して入っていった。
なーんだ。「山」「川」的な暗号を言ってるふうでもないので、
誰でも押せば鍵が自動的に開くのだな。
扉に近づこうとした時、私の目の前を、知っている人が横切って人混みに消えていった。
行きの飛行機で寝ていた日本人の男だった。




夕暮れ、旧市街を出てホテルに戻る道すがら、すでに正月モードに突入していた。
店がすべて閉まり、ほとんど誰も歩いていないのだ。
しかし不思議と恐いとか淋しい気持ちにはならなかった。
街全体が静寂なら、私の孤独は孤独でなくなる。




ホテルのエレベーターも正月モードになっていた。
ボタンを押すことも労働なのでやってはいけないんだそうだ。
自動的に各階で止まるようになっている。
それも30秒以上じぃーと開いたまま、なかなか閉まらない。
部屋は6階。もちろん下りの場合も、呼び出しはきかない。
この時から丸2日間、私はいったいなんべん階段を上り下りしただろう。
労働してはいけないはずなのに、私は客のはずなのに、
ものすごい労働を強いられたのだ。ユダヤ教徒じゃないからね。

夕飯は、この界隈はどこもやっていないので、
東エルサレム側、パレスチナ人の店へ記者氏の車で行くことに。
ホテルから歩いてすぐの記者氏のところへ向かう際、
スマホの機内モードをオン(完全オフ状態)にした。
それまでは、モバイルデータ通信をオフにして、電話は使える状態にしていた。
ホテルはWi-Fiが使える。街のカフェの多くもこちらはWi-Fiが浸透している。
が、その狭間のタイミングで、時折、ソフトバンクから注意のメールが入っていた。
ようは、こちらの通信会社に自動アクセスしてしまうと高額請求の恐れがあります、
というものだ。
しかし、私は出国前、ソフトバンクの人に、
とにかくモバイルデータ通信さえオフにしていれば、
Wi-Fi以外は勝手につながりはしないと聞いていた。
よく、データローミングをオフにするのが大事とネットで書かれているが、
そこよりも(そこも元々オフにしているけども)、
モバイルデータ通信というやつをオフにすればいいのだそうだ。
だから問題ないはずなんだけど、こちらに来てから何回か記者氏と
電話やショートメールのやりとりをしたので(国際電話状態になるが仕方ない)、
それで注意勧告がくるんだろうか?
ちょっと心配なのと煩わしいのとで、どうせ今から会うのだからと
機内モードオンにしたのだった。

彼に会うと、「さっき電話したけどつながらなかった」。
いくらここが意外に安全だからといって、自ら連絡がとれない状態にすることが
どういうことなのかわかっていますか、と軽くたしなめられた。
はい、そうでした、すいません。

彼の車のガラス窓、前も横も後ろにも、TVの文字が貼られている。
昨日、一緒に歩いていた時に「ここで自爆テロがあった」と言われた。
今朝は、嘆きの壁のほうで投石事件があった。
巻き込まれさえしなければ、一人歩きしていても平気な街だが、
巻き込まれたらアウトなのだよな、やはり。






店は「Pacha」。
http://www.pashasofjerusalem.com/

朝と同様、夜になると少し冷える。が、テラス席で食べることに。
ここでもどういうわけかネコが数匹ウロウロしている。





テーブルいっぱいに並んだアラブ料理の前菜いろいろ。
フムス(ヒヨコ豆とタヒニのペースト、フンムスとかホムスとも言う)、
ムタバル(焼き茄子とタヒニのペースト)、
ババ・ガヌーシュ(ムタバルとほとんど同じだけどちょっと味つけが違う)などを
ピタパンにつけて食べる。
それから、タブーレ(スムールとイタリアンパセリやミントのサラダ)、
ビーツのサラダ、かぶのピクルス、
ファラフェル(ヒヨコ豆のコロッケ)、キッペ(ブルグルと肉のコロッケ)、
チーズの春巻き揚げみたいなもの等。
酒のつまみになるのに、イスラムだから酒は出ない。
レモネードだ。実に健康的。
(いやしかし、レモネードには結構砂糖が入っているし、
 コーラとかジュースを頻繁に飲むことになるからそれってどうなん?
日本みたいにお茶があればいいのにね)


ふと手元の皿を見ると、なんと、ネコの手が皿の縁にかかっているではないか。


コイツが犯人だ。
ちょうど脇が花壇でそれを踏み台にできるため、テーブルに手が届くのだ。
追い払ってもひるまず、猫視??眈々と狙ってくる。
ネコは好きだけども、ここのネコはあんまりかわいくないのよ。




上はマンサフと言って、ナッツなどが入った炊き込みご飯と羊肉に、
ヨーグルト風味のスープをかけて食べるもの。
「僕は好きですが、クセがあるので・・・」と記者氏は気にしていたが、
私も好きだ。旨いよ。
ミートボールのトマトソース煮も食べたけど、
もうこの頃にはお腹がいっぱいに。



アラビックコーヒーで〆めました。

店員が時折、火の玉をぐるんぐるんまわしており、
いったい何のパフォーマンスが始まるのか?と思ったけれど、
それは水タバコに使う炭だった。
チャレンジすれば良かったかな?



1 件のコメント:

  1. ムシャりん2013年9月15日 22:11

    ■握手のじとっとした手、アジアのマッサージ屋のお姉ちゃんもそんな感じで好き。■日本って小さい国なのにほんとすごいよね。■猫、多い!カメラ買ったらエルサレムへ行くのがいいね。宮崎あおいとかがさ。■ほんと、宗教施設だと気が引けるよね、物見遊山は。■あ、わたし、オーストリアンホスピスに泊まってたよ。

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