2012年4月22日日曜日

木を買う女

昨日今日はフェスティバル、春の祭りだ。
パン祭りではない。
パン祭りは個人的に平常時にも不定期開催しているので
もはや祭り感は薄い。
近所のJAで年1回春祭りが開かれるのだ。
模擬店なども出るが、私のお目当ては植木市。
昨年は震災の影響か開かれず、残念な思いをした。

自分は花の咲く木が好きだということに近年、気づいた。
花もいいけれども、花の咲く木のほうがもっと惹かれる。
しかしネコの額のテラスに大地はない。
木にはかわいそうな鉢植え暮らしを強いる。
すまないが私のために生きておくれ。

好きではあるが、ちっとも知識はない。
この木なんの木気になる木と心の中で歌いながら
植木市であれこれ物色する。
ハッピに地下足袋の60代とおぼしき職人が声をかけてくる。
「奥さん、いいでしょう、その木。ほら、奥さん、この株の太さを
見てみなよ、枝分かれの形もいいしね、奥さん・・」
いったい何回、奥さんを連発するのだ。
嗚呼、もうどうひっくりかえっても、
お姉さんとは呼ばれないのか。
別にお姉さんと呼ばれてもうれしいわけじゃないけどさ。
それにしても、いつも思う、日本では、
他人を呼ぶ時の言葉がどうしてないのか、と。
マダムとかムッシュみたいな言葉がさ。

仕方ないから、左手を頬にあて、右手で左肘を支える
主婦の決めポーズで、「そうねえ、どうしようかしらあ」と
奥さんを演ずる。案ずるより演ずるが易し、だ。

植木屋は2軒が出店していた。
となりの植木屋のものも物色する。
上に上にと向いた小さくけなげな葉と、
すくっとした立ち姿が美しい小振りの木に目がとまる。
ナツツバキ。
「これ、いいでしょう、娑羅の樹って言われているやつね」
と、こちらは50歳くらいの職人。6月頃に白い花が咲くという。
よし、これを買おう。
「配達もするよ、庭に植えるのはだんなさんにやってもらってね」
・・・・。木を買う独身女はこの世にいないのか?
「だんなはいないんですけどね、庭でもなくて鉢植えですが」
「あ・・・。まあ、その、ちょうどいいじゃん、小振りだからさ」
大きな木を買っていたら、どうフォローしてくれただろうか。

1軒目の植木屋で、もうひとつ、この木なんの木気になる木があった。
利休梅。やはり白い花で、こちらはすでに咲いている。
しかし大きな1本は売約済み、もう1本は小さ過ぎた。
他にないか聞くと、
「あるある。この週末の祭りが終わったらさ、
車でうちの畑案内するから、そこで奥さんの好きなの選べばいいよ」
そうすることにしたが、この職人からあと何べん、
奥さんと言われることになるのだろうか。
今さら違うと言うのもナンだし。
やはり、何事も嘘をついてはいけないですね。
ついた覚えはないんだがな。
そしてもし、違うと言ったら、どう呼ばれるのか。
「お客さん」とか「お宅」とか?
 「お姉さん」は・・・木を畑まで買いに行ったりしないのだ、きっと。



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